バンドパスフィルターとは? ~特定波長を透過する光学フィルターの特長と活用例~

分析機器、光センシング、光通信など、精密な波長制御が求められる分野で活躍するバンドパスフィルター。
今回は、特定波長の光を透過する光学フィルターについて、仕様規定を含む技術的な特長とともに、LiDARや蛍光分析など、実際の活用事例も交えてご紹介します。 バンドパスフィルターについての理解や製品選定の参考になれば幸いです。
バンドパスフィルターの仕様規定
バンドパスフィルターは、光学特性の仕様を把握することが重要です。
以下が波長選択性と遮断性能を評価する上での基本的な仕様項目となります。
- 中心波長(CWL)
- 最大透過率(T peak)
- 半値幅(FWHM)
- 阻止帯域・透過率(Blocking Range)
これらのパラメータは、使用する光源のスペクトル特性や検出器の感度特性との整合性を確保するための重要な検討材料となります。以下のように仕様項目が定義されます。

バンドパスフィルターの活用例①蛍光分析
蛍光分析は、物質が光を吸収し、再放出する蛍光を利用した高度な分析技術です。
特定の有機化合物や金属元素の検出・定量に広く活用されており、非常に高い感度を備えている点が特長です。
実際の応用例
- 生体物質の分析: タンパク質やビタミンなど、生体物質の検出や定量に用いられます。
- 環境モニタリング: 水質や大気中の汚染物質の検出に活用されます。
- 医療診断: 病原体の検出や薬物の効果測定に利用されます。
バンドパスフィルターは、蛍光分析において、特定の波長範囲の光を選択的に透過させるために使用されます。これにより、励起光と蛍光を効率よく分離でき、測定の精度向上に寄与します。
バンドパスフィルターの使用イメージ
- 励起光の選択: 励起光として使用したい波長のみを透過させ、試料に適切な光を照射します。
- 蛍光の検出: 試料から発せられる蛍光を特定の波長範囲で検出し、不要な光を遮断します。
バンドパスフィルターを使用することで蛍光分析の感度と精度が向上し、より高精度な測定結果が得られます。
仕様例
励起波長用
中心波長(CWL) | 405 nm |
最大透過率(T peek) | 80%以上 |
半値幅(FWHM) | 20 nm |
眼止帯域(Blocking Range) | 0.1%以下 @440~470 nm |
蛍光波長用
中心波長(CWL) | 455 nm |
最大透過率(T peek) | 80%以上 |
半値幅(FWHM) | 20 nm |
眼止帯域(Blocking Range) | 0.1%以下 @390~420 nm |
バンドパスフィルターの活用例②分光器
分光器は、光のスペクトルを測定する光学機器であり、物質の分析に幅広く利用されています。
実際の応用例
- 化学分析: 化学物質の特性評価や反応のモニタリングに利用されます。
- 材料科学: 材料の構造や組成の解析に活用されます。
- 環境モニタリング: 水質や大気中の汚染物質の検出に利用されます。
バンドパスフィルターを搭載した分光器は、特定の波長範囲の光を選択的に透過させることで、高精度な分光分析を可能にする重要なコンポーネントです。
バンドパスフィルターの使用イメージ
- 光源の選択: 分光器に入射する光の波長を制御し、特定の波長のみ透過させることで、不要な光を遮断します。
- 検出器の保護: 検出器に到達する光の波長を制御し、測定の精度向上に寄与します。
バンドパスフィルターを使用することで、分光器の性能が向上し、より正確なスペクトルデータを得ることができます。
仕様例
中心波長(CWL) | 400 ~ 1000 nm |
最大透過率(T peek) | 80%以上 |
半値幅(FWHM) | 10 nm |
眼止帯域(Blocking Range) | 0.1%以下@400~1000 nm |
バンドパスフィルターの活用例③LiDAR
LiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザー光を用いて対象物までの距離や形状を計測するリモートセンシング技術です。自動運転車、測量、森林管理など、さまざまな分野で活用されています。
実際の応用例
- 自動運転車: 車両周辺の環境を3Dで捉え、障害物や歩行者を検知します。バンドパスフィルターにより、精度の高い環境認識が可能になります。
- 測量: 地形や建物の詳細な3Dマッピングに活用されます。バンドパスフィルターが不要な光を除去することで、より正確なデータが得られます。
- 森林管理: 樹木の高さや密度を測定し、森林資源の管理に役立てられます。バンドパスフィルターがノイズを低減し、測定の精度向上に寄与します。
バンドパスフィルターの使用イメージ
- 外乱光の遮断: LiDARシステムに混入する太陽光や周囲の人工光などの環境光を遮断し、測定対象のレーザー光のみを透過します。
- 信号のノイズ除去: 電子的なノイズや不要な波長の光を除去することで、センサーの信号品質を向上させます。
バンドパスフィルターを使用することで、LiDARシステムの測定精度と信頼性が向上し、より正確な3Dデータの取得が可能になります。


仕様例
中心波長(CWL) | 905 nm |
最大透過率(T peek) | 80%以上 |
半値幅(FWHM) | 10 nm |
眼止帯域(Blocking Range) | 0.1%以下@450~840 nm, 960~1200 nm |
バンドパスフィルターの活用例④その他
バンドパスフィルターは、さまざまな光学系に組み込まれています。
以下のような分野でも重要な構成要素として活用されています。
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