光学薄膜フィルターとは?

1. 光学薄膜フィルターとは?
光学薄膜フィルターとは、特定の波長の光を透過させたり、反射(カット)したりする機能を持つ、薄膜コーティングを施したフィルターのことです。
このフィルターは、数種類の屈折率が異なる薄膜を積層することで、光の反射や干渉の原理を活かして機能します。数十層から数百層にも及ぶ構造になっており、主にガラス基材に対して、真空蒸着法やイオンアシスト蒸着(IAD: Ion Assisted Deposition)法などを用いて製造されます。
多層膜となるため、少数層で構成されるARコート(反射防止膜)と比べると、製造に多くの時間を要します。
用途としては、不要な波長の光をカットできる特性から、特定波長の光のみを検出する検査装置や、レーザー装置などに使用されています。
光学薄膜フィルターの代表例としては「バンドパスフィルター」があり、以下のイメージの透過特性を持ちます。
2. 光学薄膜フィルターの種類
光学薄膜フィルターは、大きく分けて以下の4種類に分類されます。
目的や用途に応じて、適切な種類を選択します。
種類 | 目的 | 用途 |
バンドパスフィルター | 特定波長を透過させたい | ・蛍光顕微鏡 ・医療機器 ・分析装置 ・カメラ・センサー ・高出力レーザー発振窓 |
エッジフィルター | 特定の範囲の波長を透過させたい | ・赤外/紫外カットフィルター ・医療機器 ・光通信機器 ・コールドミラー ・分析装置 ・カメラ・センサー |
ダイクロイックフィルター | 光を2波長域に分離させたい (主に45°入射にて使用) |
・プロジェクター ・カメラ・センサー |
ノッチフィルター (バンドストップフィルター) |
特定の波長をカットしたい | ・ラマン分光器 ・各種分析装置 ・カメラ・センサー ・レーザー保護窓 |
バンドパスフィルター
エッジフィルター
ダイクロイックフィルター
ノッチフィルター(バンドストップフィルター)
3. 光学薄膜フィルターの膜構成
光学薄膜フィルターの基本構成は、高屈折率層(H)と低屈折率層(L)を交互に積層することで設計されます。このような交互層(H-L)の構造は、専用の光学薄膜設計ソフトを用いて設計され、フィルターの種類に応じて基本的な構成がある程度決まっています。
以下に、バンドパスフィルター(シングルキャビティー)の膜構成例を示します。
・基材:ガラス
・H(高屈折率層):TiO2(n = 2.30)
・L(低屈折率層):SiO2(n = 1.46)
・基材の屈折率:n = 1.52
・m:スペーサー層の定数
この構成により、以下のような16層の膜設計になります。
膜構成 : 基材 | (H L)3 H (2 × m)L H (L H)3 2L | 空気(16層)
なお、中央のmを定数とするスペーサー層((2 × m)L)の膜厚を調整することで、バンドパスフィルターの透過帯域幅をコントロールすることができます。
4. お問合せ
最近では、紫外線照射装置(殺菌・滅菌)用のUVバンドパスフィルター/エッジフィルターや、車載LiDARセンサー用の近赤外バンドパスフィルターへのニーズが高まっています。光を制御・活用する新たな製品群において、光学薄膜フィルターの活躍の場はますます広がっています。
1個から試作対応可能
ニデックでは、紫外域から可視域、赤外域まで幅広い波長範囲に対応した光学薄膜フィルターを提供しています。コーティングからダイシングカットまで一貫対応しており、サイズや数量も柔軟にご相談いただけます。
また、1個からの試作対応も承ります。
お困りの際やご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
※全ての画像はイメージです。