気相転写染色
1. 気相転写染色とは
気相転写染色とは、サングラスやファッショングラスなどのプラスチックレンズ(プラスチック製品)を真空中で染料を昇華させて染色する技術となります。
ニデック独自の染色技術であり、通常染めることのできないプラスチック、PC、PET、TPUなどの難染色性の材料に染色できることが大きな特長です。
スクリーン印刷では得られない透明感のあるグラデーションの質感を表現することができます。
この気相転写染色技術は、「第34回 日本発明大賞 発明振興協会 会長賞」を受賞しており、非常に有益な発明であると紹介もされています。
2. 眼鏡レンズの染色方法
気相転写染色を説明するにあたり、眼鏡レンズ向け染色として、これまで一般的であったWET染色と比較しながら、気相転写染色の工程、特長を解説していきます。
WET染色(浸漬染色)
WET染色工程は、以下3ステップの流れとなります。
STEP 1
100℃近くまで加熱した、染料が分散された染色液の中に、眼鏡レンズを浸漬させて染色させる。
STEP 2
一度漬けるだけでは、目的の色に染色できない場合は、何度も何度も漬け直して、目的の色へ修正する。
STEP 3
染料を定着させるために加熱処理を行う。
WET染色の課題は、染色液の使用期間や、眼鏡レンズの製造ロットにより、染色される色が非常に不安定(ばらばら)になることです。
そのため、色を熟知した熟練したオペレーターが必要になってきます。まさに職人技です。
また、高屈折レンズ(超薄型レンズ)やポリカーボネート素材の眼鏡レンズへは染色できないという問題もあります。
職人技、染色できない材料(レンズ)もありますが、眼鏡レンズの染色において、このWET染色方法が世界共通の染色方法となっております。
気相転写染色
気相転写染色の工程は、以下3ステップの流れとなります。
STEP 1
染色したい色の染料のみをインクジェットプリンターで専用の転写紙に専用のインクで印刷する。
STEP 2
印刷された紙(転写紙)と眼鏡用レンズを対向させ、真空にして染料を転写(昇華)させる。
※インクジェットプリンターで印刷された染料の量(パソコンでデジタルに管理された量)が全て転写される。
STEP 3
染料が転写(昇華)された眼鏡レンズを100℃以上に加熱することで、染料が眼鏡レンズ素材に拡散され、染色が完了する。
プリンターで色を管理するため、色の再現性が良く、100℃以上に加熱できるため、WET染色では染色できなかった高屈折レンズ(超薄型レンズ)やポリカーボネート素材へも染色することができます。
3. 気相転写染色の特長
ここでは気相転写染色が、眼鏡レンズ分野において、注目され利用されている理由である4つの特長について、WET染色と比較しながら解説します。
特長1 難染色性レンズにも染色可能
WET染色では染色できなかった眼鏡レンズにも安定的に(再現性良く)染色することができます。
レンズ材料の屈折率 | WET染色 | 気相転写染色 |
1.50 | 〇 | 〇 |
1.53 | - | 〇 |
1.56 | 〇 | 〇 |
1.59 | - | 〇 |
1.60 | 〇 | 〇 |
1.67 | 〇 | 〇 |
1.74 | - | 〇 |
上記の眼鏡レンズ以外、以下の材料にも染色可能 |
PC, PET, TPU |
特長2 色の再現性が良い
インクジェットプリンターにより染色したい量のみを安定的に印刷して、染色することができるため、染色後の眼鏡レンズの色再現性が優れています。特長3 新しいデザインが可能
インクジェットプリンターで印刷することができるため、新しいデザインを簡単に作ることができます。特長4 環境に優しい
WET染色の場合、染色液の廃液が大量に発生しますが、気相転写染色では、ほとんど廃液は発生しません。また、作業環境において、WET染色による染色特有の臭いも少なく、染色液のこぼれによる汚れも無くすことができます。
その為、気相転写染色は環境にやさしい染色技術でもあります。
4. 気相転写装置“TTM-2000”
ニデックでは、気相転写染色を行う装置“TTM-2000”も一連の染色技術としてライセンス販売しています。
また、気相転写染色の受託加工も“RefColor(レフカラー)染色”として、請け負っております。
また、装飾ミラーの“RefColor(レフカラー)ミラー”と気相転写染色の“RefColor(レフカラー)染色”を組み合わせることも可能です。光沢感や透過率の変化も組み合わせることができ、より多彩な表現も可能となります。
プラスチックへ染色、透明感のあるグラデーションを特長とする気相転写染色に関して、
ご興味が御座いましたら、お気軽にニデックまでお問い合わせください。