ウェットコート
1. ウェットコートとは
ウェットコートとは、塗料を用いて常温常圧環境下で行うコーティングのことです。
ドライコートのように成膜時にチャンバーを使用しないため、ドライコートに比べ比較的安価に大型化しやすい特長があります。用途は、光学、電子材、電池、医薬品、装飾、建材、木材、印刷、衣料など多岐にわたります。
ウェットコート(Wetコート)は湿式法、ドライコート(Dryコート)は乾式法として、識別する場合があります。
2. ウェットコートの特長
ウェットコートの塗工方法には、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、ロールコート、フローコート、カーテンコートなど様々な方式があります。要求に応じた塗工方法を選択することができます。
大面積塗工、製造コストを安価に
ドライコートと比較して成膜時にチャンバーを使用しないため、連続生産に適した方式も多く、大面積化もしやすく、方式によって製造コストも安価に抑えることが可能となります。
サブミクロン~数百ミクロンまでの膜厚対応
膜厚は、塗工方式によりサブミクロンから数百ミクロンまで対応でき様々な用途に応用ができます。
ウェットコートは、サブミクロンより厚い膜に適しています。
塗工方法により、様々な形状に対応
スプレー、ディップ、フローコートでは成型品などの塗工にも対応可能で、様々な形状に対応することができます。
平板の部材は、ダイコート、フローコート、カーテンコートなどが適しています。
フィルムへの塗工は、ロールコートにより大面積への塗工対応が可能となります。
一方、ドライコートは、ナノオーダーのより精密な成膜に適していますが、フィルムや平板に限定されることが多く、また真空チャンバーが必要になり加工コストも上がる傾向にあります。
3. ウェットコートによるARコート
ARコートの加工は、簡単な構成でも屈折率の異なる2層以上を100nm程度の薄膜で、精度良く成膜する必要があります。ウェットコートで100nm程度の膜を精度良く塗工できる方式は、枚葉式はスピンコート、ディップコート、ダイコート、連続式はロールコートなどの方式があります。
スピン方式は、塗布膜厚精度は優れますが、塗着効率が低く塗料を直接回転する必要があるため、大型化が不向きとなります。
ディップ方式は、装置は大型化が可能で平板や成型物に対応が可能です。塗着効率も優れ大量生産に向いていますが、塗料の必要量が多く、ロスになりやすく、且つ槽も開放系になり、管理などが繁雑になります。
ダイ方式は、ある程度の大型化に対応しており、塗料の初期投入量も適量で、塗布膜厚精度・塗着効率に優れ、塗工環境もほぼ密閉されており、塗料などの管理が比較的容易ですが、設備が高価になりやすいです。
ロール方式では、塗工方式によってナノオーダーの薄膜に対応しており、塗工精度・塗着効率も優れます。ロール幅に制限されますが、比較的大面積化が容易で生産性も高いです。しかし、基材がフィルムに限定され、設備が大きく高価となります。
4. ニデックのウェットARコート“Lequa-Wet(レクアウェット)”について
ニデックのウェットコートによるARコート“Lequa-Wet(レクアウェット)”は、真空蒸着では困難な大面積化を目指し開発をスタートしました。様々な検討を行った結果、以下の理由からダイ方式を採用しています。
- ターゲット基材は平板
- 塗料の初期の投入量を適量にできる
- 塗膜の塗工精度・塗着効率に優れる
- 片面塗工が可能
以下の図の様な方式となり、2mm~3mm厚アクリルシートの大型基板に対応しています。(60インチクラスに対応)また、片面・両面加工ともに対応が可能となります。
光学特性(片面反射率特性)は、真空蒸着などのドライコートによるARコートには至りませんが、ボトム値で1%以下を満たしています。
※ドライコートによるARコートの光学特性の差は、通常、ドライコートのARコートは4~6層となりますが、ウェットコートは数層のARコートとなるため、層数の差によるものとなります。ウェットコートは大面積、安価の特長を活かすため数層のARとしています。
“Lequa-Wet(レクアウェット)”の方式
5. 用途例と今後の展開
ニデックのウェットARコート“Lequa-Wet(レクアウェット)”は、ARコートに加えて、帯電防止性能も付与し、テレビガードや、医療用モニターの保護パネルとして、数多く採用されています。
現在も様々な用途に向けて、検討しています。
お問合せ
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