ロボティクス用センサーカメラに最適なARコートとは? -可視・近赤外・広帯域に対応する反射防止技術-

近年、ロボティクス分野では、より高精度なセンサーやカメラの需要が急増しています。
これらの性能を最大限に引き出すには、カメラのレンズやセンサーカバーを通過する光(計測・撮像用)の反射による損失を最小限に抑える工夫が求められており、「AR(反射防止)コート」が重要な役割を果たします。
本記事では、可視域から近赤外域まで、各種波長帯に対応したニデックのARコートの種類・特長・活用例をご紹介します。
ロボティクス分野のセンサーやカメラの企画・設計・開発に携わる皆さまにとって、製品選定の参考になれば幸いです。
1. 可視域(VIS)AR コート
可視域ARコートは、可視域(380〜780 nm)において反射を低減し透過率を高める特性を持ちます。
一般的なRGBカメラなどで、映像品質の向上に活用されます。
光学特性
片面反射率特性例 | |
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可視域(VIS)AR コートのロボティクス活用例
1.画像認識・検査でのRGB カメラのレンズ・カバー
- 製造ラインでの外観検査(キズ・欠陥検出)
- 色認識による仕分けロボット
【ARコートによる効果】微細な傷や色差を安定して検出できる画像取得に貢献
2. 物体検出・識別用カメラのレンズ・カバー
- ピッキングロボットによる対象物の認識
- 協働ロボットによる部品の識別・選別
【ARコートによる効果】対象物の検出安定性向上に寄与し、認識ミスを低減


2. 近赤外域(NIR)AR コート
近赤外域ARコートは、近赤外域(780〜1000 nm)において反射を抑え、センサーへの透過効率を高める特性を持ちます。
非接触による距離測定や、異物・異材の検出を行う近赤外カメラのレンズやセンサー窓において、測定精度や識別精度の向上に活用されます。
光学特性
片面反射率特性例 |
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近赤外域(NIR)AR コートのロボティクス活用例
1.非接触センシング・距離測定でのNIR カメラのレンズ・センサー窓
- ToF カメラを用いたロボットの自己位置推定・障害物検知
- 自動仕分けロボットでの物体の距離・LiDARを用いた形状把握
【ARコートによる効果】近赤外カメラによる検出性能のばらつきを抑え、安定したセンシングに貢献
2.ヒューマン・マシン・インタラクション(HMI※)用カメラのレンズ・カバー
- 人のジェスチャーや顔、表情の認識(ARグラスなど)
- 視線検出(アイトラッキング・DMSなど)
【ARコートによる効果】人の動きや表情の検出精度を安定させ、誤認識を抑制
※HMIとは、ARグラスや視線検出カメラなどを通じて、人と機械が情報をやり取りし、直感的に操作・制御できるようにするための仕組みです。


3. 広帯域(VIS-NIR)AR コート
広帯域ARコートは、可視域から近赤外域にかけての広い波長域において、反射を抑え、高い透過率を実現する特性を持ちます。
可視・近赤外の両波長を用いる自律型監視ロボットや、検査装置のカメラレンズ、センサー窓などで、昼夜を問わない画像取得やセンシング精度の向上に活用されます。
光学特性
片面反射率特性例 |
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広帯域(VIS-NIR)AR コートのロボティクス活用例
1.自律型監視・セキュリティロボットのカメラレンズ・カバー
- 日中は可視光カメラ、夜間はIR 照明+NIR カメラで監視
- 屋外監視ドローンで、昼夜の映像品質を確保
【ARコートによる効果】昼夜を問わず高画質な映像取得に貢献
2.ロボットアーム・検査装置でのカメラレンズ・センサー窓
- 色ムラや傷など可視光での外観検査と、NIR での素材判定を同時に実施
- 食品・医薬品の包装不良(可視光)+異物検出(NIR)
【ARコートによる効果】複数波長による検査の精度と信頼性向上に貢献


4.お問合せ
ロボティクス用センサーカメラにおいては、用途や波長帯に応じたARコートの選定が性能向上の鍵となります。
弊社では、可視域から近赤外域まで幅広い波長帯に対応したARコートのカスタマイズ提案が可能です。
お悩みの課題などございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
製品設計・試作などのご検討段階の対応も含め、ご相談をお待ちしております。