ARコート・光学用語集
ARコート・光学の専門用語を50音順にまとめました。
普段使われない難解な専門用語を、一般のお客様にとってもわかりやすいものとなるよう意訳しました。
専門用語を知る事で、ARコート・光学の理解をより深めていただけるかと思います。
ぜひご活用ください。
頭文字から探す
アクリル(PMMA)
正式名称:ポリメチルメタクリレート
光学性能が優れ、高硬度であるが、耐衝撃性に劣り、吸湿しやすい材料。
水族館の大型水槽や表示看板などに使用されている。
RFプラズマ
Radio Frequency(高周波)プラズマのこと。表面クリーニングや薄膜作成に用いられる。
イオンアシスト
Ion Assisted Depositionを略してIADと呼ばれる。真空蒸着で、イオン化したガス粒子を基材に照射することで膜を堆積する方法。
真空蒸着よりも緻密な膜ができる。
ARコート(エーアールコート)
反射防止膜。Anti-Reflectionコートの略。
AG(エージー)
防眩加工。Anti-Glareの略。ノングレア、マットとも言われる。
表面に凹凸をつけたり、フィラーを入れることにより光を拡散させる。
エッジフィルター
ある波長を境に、特定の波長範囲を透過させるフィルター。
長波長側を透過させるものをLong Wave Pass Filter(LWPF)、
短波長側を透過させるものをShort Wave Pass Filter(SWPF)と呼ぶ。
鉛筆硬度
硬度を表す指標。
【評価方法の一例】
指定の鉛筆を使用し、基材に対して45°にあて、荷重750 gで7 mm以上の距離を押す。この動作を鉛筆を回転させながら2回行い、2回の結果が一単位以上異なるときは放棄し,試験をやり直す。きず跡が生じたときは,きず跡が生じなくなるまで硬度スケールを下げて試験 を繰り返す。きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とする。(JIS K 5600 5-4準拠)
欠け
基材が欠けること。
化学気相成長(CVD)
薄膜の成膜方法の一種。Chemical Vapor Depositionの略でCVDと呼ばれる。
目的となる薄膜の原料ガスを供給し、化学反応により膜を堆積する方法。
可視光線
光のうち、人間が目で感じることのできる波長帯域のこと。
波長380~780nmを可視光としている。(1931年に国際照明委員会(CIE)で定義)
吸収率(Absorption)
物体が光を吸収する割合のこと。
反射率(R%)と透過率(T%)、吸収率(A%)を合わせると入射した光量(R+T+A=100%)となる。
屈折
光が異なる媒質に入射した際、媒質内で進行方向が変わる現象。
屈折率
物質中を通る光の進み方を示す指標。屈折率を n と表記する。
真空中の光速を物質中の光速で割った値。
クニック
フィルムなどに発生する外観異常で、基材が折れ曲がったりすることでできる白い筋の部分。
※クニック欠陥を光抜け欠陥と呼ぶ場合もある。
くもり
熱や光、溶剤などにより、膜表面や基材表面が白く濁りくもった状態になる不良現象。
※ARコートを施すことでこの不良現象がより見えやすくなることもある。
クラック
熱や紫外線などが原因で発生する割れ・ひびのこと。
恒温恒湿試験
サンプルの温湿度に対する耐久性を評価する試験。温度と湿度を任意に設定した空間に一定時間晒して、サンプルの状態を評価する。
高温試験
サンプルの温度に対する耐久性を評価する試験。高温条件下に一定時間晒して、サンプルの状態を評価する。
光学薄膜
光の反射や透過などを制御する厚さ数㎛以下の薄膜のこと。
例)望遠鏡、顕微鏡、双眼鏡などの光学部品に使用されている反射防止膜。
光学膜厚(nd)
屈折率(n)と物理膜厚(d)を掛け合わせた値。
光学膜厚(nd)=屈折率(n)×物理膜厚(d)
高屈折率材料
一般的に屈折率(n)が1.9より大きい薄膜材料。
低屈折率材料に比べて種類が多く、代表的なものにTiO2(チタニア)やZrO2(ジルコニア)がある。
光沢度(グロス)
「艶《つや》」や「光沢感」に相当する物体表面の物理的性質の尺度。
JIS規格では、屈折率(n)が1.567であるガラス表面において、60°の入射角の場合、反射率10%を光沢度100%、20°の入射角の場合、反射率5%を光沢度100%としている。
擦傷性試験
傷の付きにくさを示す指標。
【評価方法の一例】
スチールウール#0000で基材に指定荷重をかけながら、指定回数を往復させる。その往復させた箇所の外観確認を行い、生じたキズを確認する。
酸化物
酸素が結合した化合物のことをいい、TiO2やSiO2などがある。
COP、COC(シーオーピー、シーオーシー)
正式名称:COP シクロオレフィンポリマー、COC シクロオレフィンコポリマー
吸湿しにくく、精密成形に向いているが、一般的にはハードコートが密着しにくい材料。
光学用レンズやスマートグラスなどに使用されている。
真空蒸着
物理気相成長(PVD)の一種。
材料を加熱して気化させ、基板表面に膜を堆積する方法。
蒸着材料、基板の種類により、加熱方法は、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどを用いる。
スパッタ
物理気相成長(PVD)の一種。
ターゲットに高エネルギーのイオンなどを衝突させ、弾き飛ばされた原子分子を基板表面上に膜として堆積する方法。
接触角
塗膜に滴下した液体面と固体面とがなす角であり、固定表面の濡れ性を示す値である。
接触角が大きい程、液体をよくはじき、接触角が小さい程、液体が濡れやすくなる。
評価を用いる液体として、水、オレイン酸等がある。
TAC(タック)
正式名称:トリアセチルセルロース
光学特性に優れ、吸湿性が高いが、水分による劣化が進みやすい材料。
偏光板などに使用されている。
ダイクロイックミラー(Dichroic mirror)
特定の波長のみを反射し、それ以外の波長の光を透過するミラー。
特に色を分離・選択するために用いられることが多い。
耐光性試験
サンプルの光(紫外線)に対する耐久性を評価する試験。キセノンランプなどの光を一定時間照射して、サンプルの状態を評価する。
光源にはスーパーキセノンランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプなどがある。
耐薬品試験
サンプルの各種薬品に対する耐久性試験。
耐酸性や耐アルカリ性など。
チャンバー
加圧・減圧容器のこと。
反射防止膜関連では、主に真空容器のこと。
蒸着はチャンバーの中を真空にしてから蒸着材料を加熱し、成膜する。
DLC(ディーエルシー)
Diamond-Like Carbonの略称。ダイヤモンドとグラファイト(黒鉛)の特徴を併せ持つ炭素を主成分とした薄膜。
低摩擦薄膜やガスバリアなどの特徴がある。
低屈折率材料
一般的に屈折率(n)が1.5未満の薄膜材料。代表的なものはMgF2(フッ化マグネシウム)やSiO2(二酸化ケイ素)である。
ディフュージョンポンプ
(Diffusion Pump:DP)
油拡散ポンプと呼ばれる真空ポンプ。真空装置内部を高真空(10-3~10-9Pa)にすることができる。
透過率(Transmittance)
物体が光を透過させる割合のこと。
反射率(R%)と透過率(T%)、吸収率(A%)を合わせると入射した光量(R+T+A=100%)となる。
nm(ナノメートル)
単位:nm(ナノメートル)
1 nm = 10-9 m……1/1,000,000 mm
※ウイルスの大きさは nmスケール。
ノッチフィルター(Notch Filter)
特定の波長のみをカット(遮断)するフィルター。
バンドパスフィルターとは真逆の特徴をもつフィルター。
ハーフミラー
光の反射率を調整するミラー。
例)反射率50%透過率50%のミラー。
波長
波の周期的な長さ。山から山、谷から谷の長さ。
光学関連においては、光の波長を指す。
撥水、防汚
撥水は、水を弾くこと。
一般的に水の接触角で評価する。水の接触角が150度を超えると超撥水と言う。
防汚は、汚れを防ぐこと。
一般的に汚れの付き難さや、拭き取り易さで評価される。
反射率(Reflectance)
物体が光を反射する割合のこと。
反射率(R%)と透過率(T%)、吸収率(A%)を合わせると入射した光量(R+T+A=100%)となる。
バンドパスフィルター
(Band Pass Filter:BPF)
特定の波長のみが透過するフィルター。
光の干渉
光には波動性があり、強め合ったり弱めあったりすること。
ピンホール
薄膜が抜け落ちている欠点。薄膜がついていない小さな点。
Vコート
分光反射率特性がV字型になっている反射防止コート。
例)反射防止の波長が1波長の場合に使用されるコート。
フッ化物
フッ素と結合した化合物のことをいい、MgF2、LaF3などがある。
ブツ
基材上に存在する異物が原因で発生する不良。
物理気相成長(PVD)
薄膜の成膜方法の一種。Physical Vapor Depositionの略でPVDと呼ばれる。
気相中で物質の表面に物理的手法により膜を堆積する方法。
蒸着やスパッタリングなどが含まれる。
物理膜厚(d)
物差しで測った長さそのもの。
この物理膜厚に対して、光学膜厚(nd)は、屈折率(n)と物理膜厚(d)を掛け合わせた値。
光学膜厚(nd)=屈折率(n)×物理膜厚(d)
分光特性
波長毎の反射率や透過率などを表記したもの。
分散
物体の屈折率が光の波長ごとに異なること。
Haze(ヘイズ)
濁度とも言い、サンプルの濁り具合を表す数値。
拡散透過光の全光線透過光に対する割合から求められ、Haze値が高い程、白っぽく見える。
PET(ペット)
正式名称:ポリエチレンテレフタレート
耐熱性・耐薬品性に優れるが、ハード塗工時には易接着層が必要といった特徴をもつ材料。
LCD保護フィルムや飛散防止フィルムなどに使用されている。
偏光
電場と磁場の振動方向が規則的である光のこと。
ベント
減圧・加圧状態になっているチャンバー内部を大気状態に戻すこと。
真空状態においては、チャンバー内部に空気を導入して大気状態に戻すこと。
ポリカーボネート(PC)
耐衝撃性・耐熱性に優れるが、複屈折が生じるために耐溶剤性に劣る材料。
自動車用ヘッドライトや、防護楯、防犯カメラなどに使用されている。
µm(マイクロメートル)
単位:µm(マイクロメートル)
1 µm =10-6 m ……1/1,000 mm
※ヒトの髪の毛の太さは50~80 µmと言われている。
マイスナートラップ
真空装置内の水蒸気トラップ。
-100℃以下にコイルを冷やし、水分子を吸着させるシステム。
膜浮き
薄膜が基材から剥がれて、浮いて基材の上に乗っている状態。
膜剥がれ
薄膜が基材から剥がれてなくなっている状態。
マルチコート
光学薄膜を数層以上積層した多層膜コートのこと。2層以上のARコートを指す場合が多い。
密着性試験
膜と基材の密着度合を表す指標。
【評価方法の一例】
カッターで100マス(1 mm角)をケガキ、100マス上に貼り付けたセロハンテープを45°方向へ強く引っ張りテープを剥がす動作を3回繰り返し、剥がれていないマス目の数を数える。100/100で剥がれ無し。
無機膜
無機化合物(炭素を含まない物質)を使用した薄膜コート。
ヤケ
ガラス表面が濡れと乾燥を繰り返す中で、化学反応を起こして表面が白濁した部分。
有機膜
有機化合物(炭素を含む物質)を使用した薄膜コート。
誘電体
電気を通さない物質。
誘電体ミラー(誘電体多層膜)
金属ではない誘電体を薄膜材料として使用したミラー。
ロータリーポンプ(Rotary Pump:RP)
油回転真空ポンプとも呼ばれる真空ポンプの一種。
真空装置の内部を真空にするために最初に使われるポンプで、装置内部を低真空(10-1Pa程度)にすることができる。