WET膜厚とDRY膜厚
キズ・汚れから守るハードコートなど、機能性コート剤(塗料)を塗工する際、膜厚管理がその性能を発揮させるための鍵となります。膜厚は、塗料の状態によってWET膜厚(ウェット膜厚)とDRY膜厚(ドライ膜厚)の2種類があり、これらを制御する必要があります。今回は、この2種類の膜厚について具体例を交えて解説し、ハードコート剤の膜厚を管理する方法をお伝えしていきます。
ハードコート剤をご検討される際のご参考にしていただければと存じます。
1. 塗工プロセス
一般的にハードコートなどの機能性コート剤(塗料)は、蒸発する溶媒成分とコーティングとして残る固形分から構成されています。機能性コート剤を基材に塗工し、溶媒成分を蒸発させると固形分が基材の表面に残ります。残った固形分に熱・紫外線(UV)などのエネルギーを与え、硬化されたものが最終的に塗膜(ハードコートなど)となります。
ハードコート剤の塗工プロセス
2. WET膜厚とDRY膜厚
塗料の膜厚を管理する際、以下のようにWET膜厚(ウェット膜厚)・DRY膜厚(ドライ膜厚)と識別します。
WET膜厚(ウェット膜厚)とは
塗料を塗工した直後の膜厚。(1.塗工プロセス「②塗工」後の膜厚)
DRY膜厚(ドライ膜厚)とは
塗工後に乾燥・硬化させた後の膜厚。(1.塗工プロセス「④硬化」後の膜厚)
一般的に膜厚というと、DRY膜厚(ドライ膜厚)を指します。
※イメージ図です。
例えば、固形分濃度25%のハードコート剤を20μmの厚みで塗工した場合、WET膜厚・DRY膜厚は以下のようになります。
WET膜厚 | DRY膜厚 |
20 μm | 5 μm(この厚みが一般的な膜厚) |
機能性ハードコート剤は、性能を発揮させるために必要な膜厚(DRY膜厚)が設定されていますが、塗工の際、狙いどおりの膜厚(DRY膜厚)を得るため、WET膜厚をどれくらいに設定するのかを検討することになります。塗工面の仕上がり状態も踏まえ、各塗工方法・塗工設備の条件や、ハードコート剤の固形分濃度を調整してWET膜厚を管理します。
3. ハードコート剤Acierの膜厚検討
弊社のUV硬化型のハードコート剤Acier(アシェル)の塗工方法を例に挙げて、WET膜厚・DRY膜厚の検討と、希釈量について解説します。
以下のハードコート剤Acier(アシェル)の仕様・塗工方法を例として、膜厚(DRY膜厚)10 μmを狙う場合のWET膜厚と希釈量について検討してみます。
ハードコート剤 Acier仕様 |
固形分濃度 | 50% |
粘度 | 20~30 mPa・s | |
主要剤 | PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル) | |
塗工方法 | スプレーコート (装置条件・仕上がり状態を検討し、固形分濃度25%の塗工とする) |
|
狙いの膜厚(DRY膜厚) | 10 μm |
1. WET膜厚検討
狙いの膜厚(DRY膜厚)10 μmにするためのWET膜厚は、塗工方法の固形分濃度25%から逆算します。
WET膜厚=10 μm÷25%=40 μm
スプレーコートで塗工するWET膜厚は、40 μmとなります。
2. ハードコート剤の希釈量
ハードコート剤Acierの固形分濃度は50%ですが、スプレーコートの加工条件は固形分濃度25%となるので、希釈液で希釈し、固形分濃度を25%にして使用する必要があります。希釈する量は以下のように計算します。
50%固形分濃度のハードコート剤1kgに対して、希釈液を何kg((x)kg)足して、目的の固形分濃度25%にするかを計算します。 |
固形分濃度50%のハードコート剤1 kgに対して、希釈液1 kgを足して希釈し、目的の固形分濃度25%にしたハードコート剤を使用することになります。
このようにWET膜厚と希釈する量を検討して、狙いの膜厚(DRY膜厚)を制御します。
4. お問合せ
塗料の膜厚・DRY膜厚・WET膜厚とハードコート剤Acierを例に膜厚検討について、解説させていただきました。
ハードコート塗工について、わからないことや相談したいことなどございましたら、以下のお問合せフォームより、お気軽にお問合せください。弊社で検討の上、ご要望に適したご提案をさせていただきます。
※全ての画像はイメージです。