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コーティング豆知識

コーティングに関する“光学の基礎”

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コーティングに関する“光学の基礎”

コーティングを検討する際、まず、光学性能(反射率や透過率の仕様)について検討する必要があります。
今回は、「反射防止膜(ARコート)」を例に、光学性能・仕様に関する光学の基礎について解説します。
ご参考になれば幸いです。



1. 光とは

光とは、電磁波と呼ばれる空間を伝わって行く波の一種となります。
波は、山、谷と振動していますが、その1回の振動した距離(山から山、谷から谷)を波長といいます。人間の目に感じる光を可視光と呼び、波長が380~780nmの波となります。

光の基本的性質は、反射・屈折、透過・吸収、偏光がありますが、これらについて、コーティング仕様の内容と共に解説していきます。

 

2. 波長(λ)

可視光には様々な色がある為、コーティングを検討する際には、どの色を対象とするのか検討する必要があります。
光は、波と粒子の二つの性質を持ち、光の色は波の性質によって変わります。
波の間隔の事を「波長」と言い、λ(ラムダ)で表し、この「波長」が変わる事で光の色が変化し、550nmでは緑色の光、700nmなら赤色の光の様に色が変わります。
目に見える光の波長は、380~780nmであり、この範囲を「可視域」と呼びます。
可視域より「波長」が短い領域を、紫外線(UV光)
可視域より「波長」が長い領域を、赤外線(IR光)
と呼びます。

紫外線において、10~200nmの波長を遠紫外線もしくは真空紫外線、200~380nmを近紫外線と分ける場合があります。さらに、遠紫外線の内およそ10~100nmを極紫外線もしくは極端紫外線、近紫外線の内およそ200~280nmをUV-C、280~315nmをUV-B、315~400nmをUV-Aと分類することもあります。

赤外線において、およそ780~2,000nm(2μm)の波長を近赤外線、およそ2~4μmを中赤外線、およそ4~1,000μmを遠赤外線と分ける場合があります。

例えば、「可視域」の「反射防止膜」であれば、380~780nmの反射を抑えるようなコーティングの設計、成膜を行います。
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※単位のnm(ナノメートル)とは、1mの1/1,000,000,000を示し、例えば500nmは、髪の毛の直径(0.05mm)の1/100になります。
また、単位のμm(マイクロメートル)は、1mの1/1,000,000を示します。


3. 屈折率(n)、吸収係数(α)

コーティングを検討する際に重要となるのが、物体の「屈折率」と「吸収係数」となります。
「屈折率(n)」は、どの程度の光が「反射」するか
「吸収係数(α)」は、どの程度の光を「吸収」するか
に関係します。
「屈折率」は「波長」によって値が変わり、これを「分散」と呼びます。
虹はこの「屈折率」の「分散」によって七色に分かれて見える現象となります。
「吸収係数」も同様に波長によって異なります。
コーティングを設計するうえで各波長に対する、屈折率・吸収係数(分散データ)は、重要なデータとなります。

これらの値は殆どの場合、物質によって決まっている為、コーティングを依頼される際に、その対象物(基材)の分散データが必要となります。物質名、そのサンプルをご提示頂ければ、弊社にて調査することも可能です。


代表的な物質の屈折率

物質名 屈折率@550nm
青板ガラス 1.52
アクリル 1.49
ポリカーボネート 1.58
1.33
空気 1.00

分散イメージ
mame_2111_kougaku_08_prism_small.png


4. 反射率(R%)、透過率(T%)

光の「反射」は「屈折率」の異なる物体同士(例えば、空気とガラス)の間で発生します。
この2つの物体の「屈折率」の差が大きい程「反射」が大きくなります。
「反射」や「透過」の程度を示す値として、「反射率」、「透過率」があります。

「反射率」は、物体に入射した光を100%とした時、どれだけ反射して戻ってくるか
「透過率」は、物体に入射した光を100%とした時、どれだけ透過するかの割合の値です。
また、「反射率」[透過率」の他にもう一つ考慮する必要がある値として、物体が光を吸収する「吸収率」があります。

この「反射率」「透過率」「吸収率」は、以下の関係となります。

「反射率」+「透過率」+「吸収率」=100%  (※入射光を100%とする)

よって、「透過率」が少ない場合は、「吸収率」若しくは「反射率」が多くなっていると推測でき、「反射率」が多い場合は、「透過率」が少ない事が推測できます。

「反射防止膜」は、「反射率」を抑える事で「透過率」を多くする事が出来ます。
「反射率」が少なくなる為、映り込み等も防止する事ができ、視認性が向上します。

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mame_2111_kougaku_04_arexample.png


コーティングの仕様としては、「反射率」や「透過率」を検討する必要があります。

例えば、アクリル板を通して反対側を見易くしたいと言った様な御要望であれば、
「反射率」を少なく、「透過率」を多くするようなコーティングを設計します。

コーティング仕様としては以下の様な内容になります。

可視域用 反射防止膜

仕様:反射率≦0.5% @λ=500~600nm
   (500nm~600nmの波長域で、反射率が0.5%以下となるコーティング)

※反射率、透過率はそれぞれ、「R%」「T%」と略される場合が多く、Raveなどは平均反射率を示す場合もあります。

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5. 偏光

さて、実際に「反射防止膜」を使用する方法を考えると、光が物体に垂直に入射するのみでは無く、物体の斜めから光が入射すること(斜入射)も想定する必要があります。
斜めからの光の入射を検討する為には、「偏光」と呼ばれる光の性質について理解する必要があります。

光の波には方向があり、自然光は向きが揃っていない状態となっています。
この光の波の向きが偏った状態を偏光と呼び、液晶モニター等はこの偏光を制御する事により、光を遮光したり透過したりしています。
偏光には「p」波方向と「s」波方向があり、入射面に対して相対的に平行成分を「p」波(parallel)垂直成分を「s」波(senkrecht)と呼びます。
また、p波をp偏光、s波をs偏光とも呼びます。
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「p」波、「s」波は入射角(光が斜めから入射した時の角度)によって「反射率」が異なる為、特に「偏光」を使用する物体等では詳しく検討する必要があります。
以下グラフは、ガラス(n=1.52)入射する光(波長500nm)の入射角度に対するs波、p波の反射率となります。以下の様にs波とp波では、角度に対し反射率が異なります。



ガラス(n=1.52)の入射角(θ)と反射率の関係

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コーティング仕様においては、一般的に斜入射の反射率を検討する際、以下の様に表現されます。

仕様:反射率(s偏光)≦1% @λ=500nm(AOI=45°)

※上記の場合、AOI=Angle of Incidence=入射角を表し、45度入射で波長500nmのs偏光の反射率を1%以下という仕様になります。

お問合せ

ニデックでは、紫外域~可視域~赤外域まで幅広い波長範囲へのコーティングを行っております。コーティングのご検討の際いて、お困りの際は、お気軽にお問い合わせフォームからお問合せ下さい。
コーティング仕様も含め、検討提案させて頂きます。


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