防汚コート
1. はじめに
スマートフォンの液晶画面を汚したくない。眼鏡レンズの表面をキレイに保っていたい。そんな「製品をキレイにしたい」という願いを叶えるための方法が、防汚コートです。
ここではこの防汚コートについて、解説します。
2. 防汚コートとは
防汚コートは、「付着した“汚れ”を除去しやすくする」「“汚れ”そのものを付着しにくくする」など、汚れから製品を守るコーティングです。このコーティングを施すことで汚れの除去を容易にし、メンテナンスにかかる手間を省くことができるようになります。
3. 汚れって何?
そもそも、“汚れ”とはなんでしょうか?
実は私たちが普段目にする“汚れ”には、大きく分けて3種類のものが存在します。以下の表は、それを簡単にまとめたものです。
“汚れ”の種類 | 対応 | 例 |
水溶性の汚れ | 水で洗い流す | 汗(塩分)、糖分 |
油溶性の汚れ | 洗剤や石鹸を使う | 油脂、指紋 |
固体の汚れ | 風や布で拭き取る | 泥、塵、埃 |
これらの“汚れ”は性質がそれぞれで違うため、製品に付着した際の振る舞いも異なります。よって、製品をキレイに保つためには、必要なメンテナンスの方法を“汚れ”の種類によって変えていく必要が出てきます。
防汚コートは、そんなメンテナンスの手間を軽減することができます。その秘密は防汚コートの仕組みにあります。
4. 防汚コートの仕組み
まず「液滴等の汚れを除去しやすい防汚コート」についてお話しましょう。
液滴等の汚れが製品に付着するのは、分子間力というものが関わっています。分子間力とは分子同士の引き合う力のことで、液体や固体等の分子により構成されている物質では、この力が働いています。液状の汚れが固体表面(基材表面)に付着した際、液体分子と固体表面(基材表面)との間に分子間力が働き、液体を固体表面(基材表面)が吸着しようとします。液体分子の間で働く分子間力が、固体表面(基材表面)と液体との間で働く分子間力より弱い場合、体表面上に吸着されて濡れ広がります。
汗や指紋のような『水溶性の汚れ』、『油溶性の汚れ』は、このようにして付着しているのです。
そこで、「固体の分子間力を弱めて液体を吸着する力を弱めてしまおう=汚れを弾く」という発想で生まれたのが、「液滴等の汚れを除去しやすい防汚コート」です。
つづいて、「固体の汚れの付着を防ぐコート」についてお話します。
埃や塵が製品に付着するのは、静電気等が要因になっています。特殊な材料を用いて製品表面を帯電しにくい状態にし、「固体の汚れ」の付着を防ぐことができます。このようなコーティングは、「帯電防止コート」と呼ばれています。
また、静電気だけではないその他の要因で付着する場合も存在します。そのような要因に対し、例えば、基材の表面に特殊な微細構造を構築することで「固体の汚れ」を付着しにくくする方法も存在します。これは「防塵コート」と呼ばれています。
5. 防汚コートの用途例
以下の様な用途で防汚コートが活用されています。
- ナビパネル表面
- タブレット、スマートフォン
- 眼鏡レンズ
- 各種筐体・モニター部
- センサーカバー(読取り部)
6. ニデックの防汚コート
弊社ではフッ素系の防汚剤を用いて、『水溶性の汚れ』『油溶性の汚れ』に対して防汚性を実現させています。コート最表面にフッ素分子が並んでいるような状態に製品を加工し、固体の分子間力を弱め、液体の汚れをより弾くようにしています。
これにより、以下の画像のように防汚剤をコーティングした基材に油性マジックで書いても、マジックを弾くことができます。さらに、乾いた布で拭き取ることも可能です。
防汚コートは、汚れを弾く以外にも触感に影響する滑り性も上がります。
また、ARコート(反射防止膜)上に防汚コートを加工することで、反射防止性能かつ防汚性能を併せ持ったコーティングも実現しています。その他にもプラスチックのキズ防止用のハードコート剤にも各種防汚性能を付与したコーティングも実現しています。
防汚コート剤は、日々改善検討されて、より性能の良いものが開発されています。
弊社でも日々、防汚コートの改善検討しており、各種用途に合わせて防汚コートのご提案をしています。