AR コート(反射防止膜)について、「どんな方法で加工していますか?」「どんな成膜方法を選べばよいですか?」といったお問い合せを多くいただきます。
今回は、AR コートの代表的な処理方法や選定のポイント、仕様の決め方について解説します。
AR コートをご検討の際のご参考になれば幸いです。
ARコートの処理方法は、大きく「乾式法(ドライ)」と「湿式法(ウェット)」の2つに分類され、それぞれに複数の成膜方法があります。以下の表では、各方法のメリットとデメリットを比較しています。
| 処理方法 | メリット | デメリット | |
| 乾式法 (ドライ) |
真空蒸着 |
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| スパッタリング |
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| イオンアシスト (IAD) |
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化学気相成長 |
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湿式法 |
ダイ |
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(フィルム、シートのみ) |
| スプレー |
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| ディップ |
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| フロー |
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AR コートの処理方法を選ぶ際には、製品の要求仕様やコスト、形状など複数の要素を総合的に検討する必要があります。選定時に押さえておきたい主要なポイントを解説します。
乾式法は高性能ですが、装置が高価で加工時間も長く、コストが高くなります。
参考:数層の反射防止膜は「LRコート(Low Reflective Coating)」、3層以上の低反射の反射防止膜は「ARコート(Anti-Reflective Coating)」と呼ばれる場合があります。
ARコートはナノオーダー(nm)の膜厚で均一性が求められるため、基材や形状、サイズにより適用できる方法が異なります。
| 形状 | 処理方法 | |
| 乾式法(ドライ) | 湿式法(ウェット) | |
| シート、フィルムなど フラット形状 |
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| レンズなどの湾曲した形状 |
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ARコートの仕様検討のポイントとなる「反射率仕様」と「入射角仕様」について解説します。
ARコートの仕様は、特定の波長範囲における反射率や透過率で規定されます。
代表的な仕様例
・片面反射率 R≦0.5% @λ=500~600 nm AOI=0°
・両面反射率 R≦1.0% @λ=500~600 nm AOI=0°
・透過率 T≧98.0% @λ=500 ~600 nm AOI=0°
ポイント
仕様を決める際は、どの指標(片面反射率、両面反射率、透過率)を基準にするかを明確にすることが重要です。特に透過率を重視する場合、ARコートを施す基材の透過率も考慮する必要があります。さらに、紫外線や赤外線領域では、基材の吸収波長を把握しておかないと、期待する性能が得られない可能性があります。
使用用途により、入射角(AOI:Angle of Incidence)を設定する必要があります。これは、反射防止をしたい光の入射角によりARコートの膜厚、および特性が変化し、入射角に合わせたARコートの設計が必要となるためです。(下図「ARコート片面反射率特性」参照)
ポイント
一般的に指定がない場合は AOI=0°で検討しますが、実測では AOI=8°や12°で代用されます。入射角が大きくなると、偏光(p偏光・s偏光)の差が顕著になります。偏光を扱う光学部品では、p偏光、s偏光、ランダム光(p+s)についても仕様検討が必要です。
AOI=0°,5°,10°,15°,20°,30°,45°, 50°, 55°ランダム光のARコート片面反射率特性
ARコートは、製品の性能や品質に関わる技術ですが、その性能を引き出すためには、処理方法から仕様まで、最適な選択が必要となります。
ARコートをご検討の際には、今回の内容を参考にしていただけますと幸いです。
※全ての画像はイメージです。