光学薄膜フィルターとは、特定の波長範囲の光を透過させる、または、反射（カット）させる機能の薄膜が付いたコーティング製品（フィルター）のことをいいます。
数種類の屈折率の異なる薄膜の組み合わせにより、光の反射や干渉を利用したフィルターとなり、数十～数百層の積層となります。主にガラス基材に真空蒸着法や、IAD（Ion Assisted Deposition）法により作製します。数層であるARコート（反射防止膜）品と比較すると作製には多くの時間を要することになります。
用途としては、余分な光をカットできるため、特定の波長のみを検出する検査装置や、レーザー装置等に使用されています。
代表的な光学薄膜フィルターにバンドパスフィルターがありあますが、以下の様なイメージとなります。
光学薄膜フィルターは、大きく分けると以下の4種類となります。使用したいシーン(要望)に合わせて選択します。
| 種類 | 要望 | 用途 |
| バンドパスフィルター | 特定波長を透過させたい | 蛍光顕微鏡 医療機器 分析装置 カメラ・センサー 高出力レーザー発振窓 |
| エッジフィルター | 特定の範囲の波長を透過させたい | 赤外/紫外カットフィルター 医療機器 光通信機器 コールドミラー 分析装置 カメラ・センサー |
| ダイクロイックフィルター | 光を2波長域に分離させたい (主に45°入射にて使用) |
プロジェクター カメラ・センサー |
| ノッチフィルター (バンドストップフィルター) |
特定の波長をカットしたい | ラマン分光器 各種分析装置 カメラ・センサー レーザー保護窓 |
基本的な光学薄膜フィルターの膜構成は、高屈折率層(H)と低屈折率層(L)を繰り返す交互層(H L)の積み重ねにより設計します。この設計は、専用の光学薄膜シミュレーションソフトを用いて行うことになりますが、特性の種類によって基本的な構成はおおよそ決まっております。
例として、バンドパスフィルター(シングルキャビティ―)の膜構成を以下に挙げます。
基材＝ガラス、H＝高屈折率層（TiO2）、L＝低屈折率層（SiO2）、m＝定数
（シミュレーションの屈折率：n(基材)=1.52、n(H)=2.30、n(L)=1.46）
とすると、以下の16層膜の構成で以下の様な光学特性（透過率）となります。
膜構成 ： 基材 ｜ (H L)3 H (2 × m)L H (L H)3 2L ｜ 空気（16層）
定数mのスペーサー層の膜厚により、バンドバスフィルターの透過帯域幅が変化します。
最近では、紫外線照射装置（殺菌、滅菌）用の紫外線バンドパスフィルター/エッジフィルターや、車載用のLiDARセンサー用の近赤外域バンドパスフィルターとしての要望も多くなってきています。光を操作・活用する様々な新規製品に光学薄膜フィルターの活躍の場が広がって来ております。
ニデックでは、紫外域~可視域~赤外域までと幅広い波長範囲へ光学薄膜フィルターの対応をしております。また、コート → ダイシングカットまでの対応と、一品からの対応もしております。（サイズはご相談）
光学薄膜フィルターについて、お困りの際、ご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。