イオンアシスト蒸着(IAD)

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目次

1. イオンアシスト蒸着(IAD)とは

イオンアシスト蒸着(IAD:Ion Assisted Deposition)とは、蒸着中にイオン銃と呼ばれる装置でイオン化したガス粒子を基材に照射することで蒸着材料分子を基材へ押し付け、膜質を良くする成膜手法です。

イオンアシスト蒸着を行うことでより緻密な膜を成膜することができ、成膜後の水分等による特性変化を防ぐことができます。また、通常蒸着と比較して密着性の高い膜を成膜でき、膜の応力を調整することも可能です。

イオンアシスト蒸着(IAD)


2. イオンアシスト蒸着の特長

イオンアシスト蒸着には、大きく3つの特長があります。

膜質が良い

真空蒸着の膜に比べ、密度が高く、緻密な膜が成膜可能。

密着性が良い

運動エネルギーのアシストによる強いアンカー効果により、密着性が高い。

精度の高い成膜

安定した成膜。特性変化の少ない精度の高い成膜が可能。



3. 膜質について

通常の真空蒸着では真空容器内で抵抗加熱や電子ビーム加熱といった方法により蒸着材料を加熱し、蒸発させることで真空容器内上部に設置した基材表面に材料を堆積させます。この時、加熱部から蒸発して基材表面にたどり着く材料分子の運動エネルギーは0.1 eV程度であり、スパッタリング法(10~100 eV程度)と比較して優しく堆積していく形となります。

一般に材料分子の運動エネルギーが高い程、基材表面の不純物等が弾き飛ばされやすく、堆積している材料分子が移動し、密度が高まることが知られています。イオンアシスト蒸着(IAD)では1 keV~数10 keVの運動エネルギーを持つイオン化させたガス分子を照射することで通常蒸着と比較して密度の高い緻密な膜を成膜することができます。



4. 高い密着性の原理

イオンアシスト蒸着の膜形成初期段階ではイオン化したガス分子が基材表面にたどり着いた蒸着分子に衝突し、一部の蒸着分子は衝撃により放出されます。また、一部の分子は衝突したエネルギーにより、基材内部に押し込まれ基材表面に基材分子と蒸着分子が混ざった層(混合層)が形成されます。この層の蒸着分子がより強いアンカー効果として膜が形成されることにより基材と膜の間に強い密着性を持つことができます。

イオンアシスト法の概念図



5. IAD、蒸着、スパッタとのメリット、デメリット比較表

一般的な真空蒸着、スパッタとイオンアシスト蒸着(IAD)のメリット、デメリット比較を以下に示します。

  長所 短所
イオンアシスト蒸着(IAD) 高密度で安定した膜
成膜材料を選ばない
成膜速度は比較的高速
膜応力が大きい
装置・付属品が高価
設定条件が多く、処理が複雑
真空蒸着 成膜速度が速い
成膜材料を選ばない
装置・成膜材料が安価
膜が柱状構造で低密度
薬品によっては高温が必要
スパッタ 高密度な膜
再現性が高い
付き回りがやや良い
成膜速度が遅い
装置・成膜材料が高価
誘電体は不得意



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