ハードコートの種類について、使用する材料から分類した場合、無機系、有機系に大別することができます。さらに近年では有機と無機の材料の両方を使用した、有機・無機ハイブリッド/コンポジット系も検討され、実用化されています。ここでは、無機系ハードコート、有機系ハードコート及び、有機・無機ハイブリッド/コンポジット系のハードコートについて解説します。
また、硬化方法については、コーティング豆知識「塗料(ハードコート)の硬化方法」で解説しているように「UV(紫外線)硬化、熱硬化、常温(湿気)硬化」のいずれかを選択することなります。
無機系ハードコートは硬化後に無機質の薄膜をつくります。無機層のため高硬度の膜ができますが、硬脆くなる傾向があり厚膜でコートすることは難しくなります。
プラスチックに使用できる材料としてはアルコキシシラン系が多く、通常熱による硬化になります。
有機材料のみで構成されるハードコートではアクリレート、ウレタンアクリレート系のモノマー、オリゴマーが多用され、硬化方法としてUV硬化もしくは熱硬化が選ばれます。一般的に表面硬度と硬化時の収縮、クラックの発生がトレードオフの関係になり、複数の材料を選択することで調製されます。
材料の選択により、表面硬度を優先するハードコートから柔軟性を優先するものまで多種多様な特性のハードコートが調製可能になります
有機材料と無機材料を分子あるいはナノレベルで化学的に結合または相互作用させることによって得られるハイブリッド/コンポジット*材料が、両方の特性を併せ持つ材料として注目され、幅広く検討されてきました。
*有機材料と無機材料の間に化学的な結合がある場合を「ハイブリッド」、結合がなく相互作用や混合のみの場合を「コンポジット」と分ける場合があります。
通常有機材料と無機材料を混合しただけでは、表面のぬれ性の差により凝集等が起こり、全体が均一とならず両成分の特性を併せ持つどころか、打ち消しあってしまう場合もあります。両成分を均一分散することで、双方の優れた特性を維持した新たな材料を作製することが可能になります。
有機・無機ハイブリッド/コンポジット材料の調製において無機成分として多用される材料としてはシリカ粒子があげられます。シリカ粒子は比較的安価な材料であり、形状も豊富で入手性も良く、またシリカの屈折率(約1.4~1.5)がPMMAの屈折率(約1.49)に近いことから、両者を混合した場合、屈折率の違いに起因する光の界面反射が起こり難く、透明な複合材料を作製し易いとされています。しかしこの場合でもシリカ粒子の粒子サイズが50nmを超えると光の散乱による透明性の低下が生じやすくなります。さらに使用する材料に合わせて無機成分の粒子を変えることで有機・無機ハイブリッド/コンポジット材料の屈折率を調整することも可能になります。
有機・無機ハイブリッドハードコートは無機成分が有機成分と結合しているためマトリックス中から脱落し難いという特徴がありますが、作製においては反応を伴うため工程が増えることになります。有機・無機コンポジットハードコートは作製が比較的容易になります。粒子の表面改質で相溶性を上げることで安定的な分散が可能になります。両者ともに有機ハードに比べ無機成分があるため硬化収縮を減らすことが出来ます。
ニデックでは、以下の表の通り、UV硬化型の有機・無機ハイブリッドハードコート剤のAcier、耐擦傷性及び耐候性、柔軟性を向上させた有機系ハードコート剤のPreveilなど、用途・要求物性に合わせた各種ハードコート剤をラインアップしております。
製品名 | 種類 | 特徴 | 硬化方法 | |
Acier | 有機・無機 ハイブリッドハードコ―ト |
硬さ重視 | 高硬度で耐擦傷性と防汚性を有するハードコート剤。 | UV硬化型 |
Preveil N | 有機系 ハードコート |
耐キズ付き重視 | 特殊樹脂の配合により、優れた耐擦傷性能に加え、柔軟性を有するハードコート剤。 | UV硬化型 |
Preveil B | 柔軟性重視 | 高耐擦傷性と耐久屈曲性を有するハードコート剤。透明PIフィルム等のフレキシブル用。 | UV硬化型 | |
PROTEGER UVR4000 | 屋外向け | 屋外・外装用プラスチック基材(PMMA、ポリカーボネートなど)用に開発した耐光/候性を付与したハードコート剤。 | UV硬化型 |
ご要望によりカスタマイズ検討も対応していますので、ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせフォームからお問い合わせください。